
“ハイライ”というワードを聞くことは大分県では中々にない。記者の地元、大分県佐伯市の“佐伯んし”でも耳にしたことのない方がほとんどだと思うが、ハイライとはある料理名を短縮したもの。今回の講釈はジックリ煮込まれた牛タンがゴロリと入った一品の話。
ダークブラウンのドミグラスと、オフホワイトの生クリームが交差する様は巨匠が描いたキャンバスのよう。これ、スプーンで壊しても良いのだろうか…そんな妙な自分との葛藤から食事は始まる。

おもむろに投入したスプーンにドッカリ、ドローンと乗っかる牛タンとルウは迫力があり、そのキャパシティの多さを実際に感じ取ることが出来る。これは最初からライスに乗っかっているより伝わってくるモノが違うから心して取り掛かって欲しい。食事は五感を使う“儀式”なのだ。

でっ、ライスとルウを同居させたら時間を置かずにすかさずバックリ。最初にくるのは鈍角な苦味とコクがトマトの酸味を抑えるように仕上がったドミグラス。このような“ビタ・コク”な味わいは初めてで、誰もが“大人な”と表現してしまうのもうなずけるし、ライスと絡まったときの充実感はこの上ない至福のときで喰らう速度はとどまることを知らない。

ただ、記者が感じる“大人な部分”はそこじゃなく、ホロ・トロに煮込まれたワイルディー風味の牛タンにある。ふつう、こういう料理に使われる肉は旨味をすべてルウに奪い去られているものなのだが、この牛タンはシッカリとそのフレーバーが閉じ込められており、ドッシリとした食べ応えとともに奥深い味わい。
また、食感も仄かに繊維を感じさせる仕上がりで、何を食しているかという自覚を常に促される。トロっと一瞬で消えてなくなるものは寂しさを禁じえないし、ストーカーのようにまとわり付くものは悲劇というほかなく、料理人の業(わざ)が優れていることを示す。

さて、是非ともこのハイライなる逸品を食してもらいたく、ここにご紹介した訳だが、くだんの謎掛けを放置したまま…。大阪ではハヤシライスをハイシライスと呼び、短縮したコードネームは“ハイライ”と称される。
もちろん、諸説あるが、実は記者は大阪生まれ。大阪の人間はボケたりツッコんだりの毎日でウソをつく暇などないが、大切なことは名前の由来ではなく、その味わいの実力だけ。丘の上のそのまた上に佇む安息地のハイライ…ぜひ一度お試しあれ。(おわり)
撮影場所 大分県大分市 レストラン・パパスダイナー