
“男二人でメリークリスマスイブな夜”の続き。熊本産馬刺しに続いて頼んだのはぎんなん串。ご存知の通りギンナンはイチョウの実なのだが、あの強烈な臭いのする実を最初に食した方…よくぞ喰ったと言いたい。ウニ、ナマコ、ホヤ、フグなど、“初喰い”した者にノーベル賞をやりたいと思う食材はほとんどが海の幸な中、このギンナンは山の幸ではクリの次あたりではなかろうか…。
クニっとした食感の下に眠る大地の味わいが噛み締めた瞬間から広がるが、とても仄かで雑味がない。味付けは塩のみだが、そのことがギンナンの良さを最大限に引き出す味付けと知らされる。焼酎でやったが、これは日本酒だな。

次はアラ(クエ)の西京焼き。このアラは5キロ物だが、それでもやっぱり脂の力は強い。西京味噌が持つコクと酸味もジットリと身肉に染み込み、日本料理技法の“凄味”に触れることができる。
また、ここ(松の花)は型の良いアラが港に揚がったときは必ず競り落としてくれる…はずであるから、おしながきに“アラ”の文字を見つけたら料金のことは色々言わず、できるだけ頼んでもらいたい。決して損はさせない……はずである。

最後はここ(松の花)の新しい“女子アテ”の明太チーズ春巻。四種の色彩がケンカせず順番待ちしながら広がってくる。
一つ目、春巻の皮のバリザクとした食感。薄氷を踏むが如く歯触りが軽く心地よい。香ばしさも同時進行。二つ目、チーズのコク塩っぱい味わい。この味わいがこの料理のメインで、熱せられて生まれた“ニチャ”もオマケとして嬉しい。

三つ目、明太子の魚卵の風味。チーズだけだとベクトル的にどうしても洋風を指してしまうが、明太が入ることによって“和”を保ち、ワインじゃなくともイケる方向性を醸し出す。四つ目、大葉。こいつが持つ役割はリセット。油通しされ嫌味のない程度に洗練された青い味わいが先に行った三つの味わいを見事にまとめ上げ、そして無に還す。これなら何本でもバリザクモムゴクになること請け合い。是非。
撮影場所 大分県佐伯市 酒菜屋・松の花
取材日 平成21年12月24日